特集「もったいない展」を開きたい イオギャラリー
第1回 あまり布を役立てたい
イオグラフィックの事務所。今、大橋は「もったいない展」に向けて、時間ができるとテーブルに布を広げて作業をしています。定規をあてて布をカット。
11月、京都の梅小路公園手づくり市に出店中の梅村マルティナさん。気仙沼の人たちと作ったニットアイテムを販売中。
ドイツのTutto社と提携して作ったオリジナル毛糸「気仙沼“海”」(左)と「気仙沼“森”」(右)で編んだ腹巻帽子。
「小原木タコちゃん」は養子縁組料として1000円をいただいている。詳細はこちら
何か私たちにできること
「もったいない展」というのは、わざわざ買った布(きれ)じゃなくて、うちにあるあまり布で作ったもの、ということなんです。何かに作って形にして、見ていただいて買っていただこう、売り上げを寄付金にして役立てたい、という。
 東日本大震災からもうすぐ2年になります。震災の直後、何か役に立つことをと考えて、みんなもそうしていたと思うけれど、私もできるだけでしたけれど自分のおこづかいから義援金を、と郵便局に走りました。でも何十万円も私なんかはできない。でも何十万円も送りたいと思いました。それで何か作ってそれを買ってもらったものをそのまま寄付できたらいいな、と考え、去年の5月にうちにあったリネンなどのあまり布を使って手さげを縫って「もったいない展」をしたんです。梅原和香さん、江面旨美さん、梅村マルティナさんも参加してくださって、何十万円も集めることができました。本当はもっともっとたくさんできればいいんだけれど、自分たちができるのはそれが精一杯でした。
 それからも何か手伝いたい、手伝えることがあればいいな、と思っていたんですけれど、なかなかきっかけがつかめなくて。まったくほんとうにそういうつながりなくて。「ほぼ日」さんで気仙沼に行かれる時について行ってそれでいろんなところを見せてもらって、何か私も手伝えるかな、何ができる?と考えたけれど私、何もなかった。
 去年「もったいない展」に参加してくださった梅村さんは、気仙沼にアトリエを作られました。毛糸で気仙沼の人たちに「腹巻帽子」や「小原木タコちゃん」というストラップを作ってもらってそれを売るという活動にちゃんとたどり着かれています。でもそういうことが私にはできないんですね。何か作ってもらうとか、参加してもらうということが私の仕事の中にはないからかもしれないですけれど。
赤、黒、チェック、ストライプ…かわいい布バッグに変身する予定の布の山。コートやワンピース、スカートなどのサンプル生地が中心です。
布ならいっぱいある
 それで、また同じことを今回もやろうということなんです。布ならいっぱいあります。服を作るのに取り寄せた見本の布とか、サンプルを縫ったときの残り布とか。何かを買ってきて作るとなるとやはり負担になるけれど、「こんないいものなのに活用しないで棚にあるだけなんてもったいない」と思っていた布です。服を作るつもりの生地だから、結構いいものなんですね。それが何か生活の使えるものになれば気持ちもいい。今イオグラフィックのスタッフといっしょに作業を進めています。今回はウールなど冬物の生地を中心にして。前回も手さげだったから、そこから発展してないんですけれど、とにかくかわいいものを作りたいと思っています。
 自分たちの作ったものが自分でも欲しい、かわいくて売りたくない、と思うようなものを作りたいんです、全部を。「かわいいですよ、すごくかわいくできてますよ」と見てもらえるもの、これなら使える、と思ってもらえるもの。もしかしたら、それがただ欲しいだけでいらしてくださる方もいるかもしれない。でもそれはそれでいいのではないかと思っています。
オーブンミトンも出品します。作り方を紹介した「アルネ」のバックナンバーを確かめながら、こつこつと作っています。
事務所でもショップでも手があいた人がミシンに向かいます。手さげの持ち手ですね。
それぞれの布の雰囲気やサイズを最大限生かそうと真剣に相談する大橋とスタッフ。
何を縫っているところ? 特集の第3回でご紹介します!
まだ終わっていない
 震災のことは、ずっと気になっているのにあれから何もやってない。それがどこかでずっと後ろめたくて気になっていました。私はイラストしか描けないから、「描いたラフ画を例えば活動しているところでアイキャッチにでも使ってください」と、糸井さんのところに預けてはあるんですけれど、私のやれることはなかなかないですね。ただやっぱり終わったわけじゃないじゃないですか。解決したわけじゃないじゃないですか。2年が過ぎて報道も減ってきて。でも、そんな終わるわけはないんです、簡単に。
 現地に行けばいいのかもしれない。原発反対のデモにずっと行っている友人もいる。経営的な才能がすごくあったら、いろんなアイディアだったり道筋だったりができたかもしれない。けれどそれは私には無理。でも、うちにあるあまり布を使ってかわいく作ったものが何かの役に立つといいなあ、それだったらできるし、続けられるかもしれない、と。考え方がゆるいかもしれないですけれども。
 「もったいない展」をやっても何かができる、というほどのお金にはならないけれど、誰かが何かをするってことを、いろんな人がけっこうまだまだやっているんだということを、終わってないこととして受け取ってもらえればいいな、と思っています。
 
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