特集 entoanの新しい靴
第1話 新しい靴ができました!
 イオショップ&ギャラリーでの櫻井さんの靴展の開催は1年半ぶりになります。定番で大人気のスリッポンはもちろんですが、今回は新作も登場するとのこと。entoanの櫻井義浩さんに「おすすめを教えてください」とお願いしたところ、とても心のこもった手紙のような“説明書き”が届きました。櫻井さんは誰かに手紙を書くようにひとつひとつの靴を手でつくっているのだなあ、と思いました。今回の特集はそれをそのままおとどけします。
 今年の前半は、靴の展示会を行わず靴の制作に時間を注ぎました。
去年の後半は、下駄箱の制作に時間を費やし、トートバッグの製作も忙しくなり、靴に時間を使うことができなかったからです。
 去年はentoanとしてどのような靴を作りたいのか、作ればいいのかわからなくなり、悩んでいた時期がとても長かったです。ブランド立ち上げ当初から、デザインと作りをシンプルにという思いで靴を作ってきました。そして生まれたのがスリッポンでした。その後も、同じ思いで靴を作っていこう。作らなくちゃと思い形にはなりましたが、entoanの靴っぽくないし、靴を作るということがつらい事が多くなりました。
 自分の靴らしくないのは、シンプルにシンプルにと考えすぎているからではないかと思い、まずは自分らしい靴、自分の作りたい靴を作る事にしました。
 自分が靴を作るときはデザイン、素材、構造、雰囲気を頭の中ですべてまとめていきます。ここに一番時間をかけます。頭の中で靴が完成したら、実際に革を使って作っていきます。作っていくと、頭の中ではわからなかったところが見えてきたりして微調整をします。
 このような作り方をした靴が3型生まれました。ラインナップはシンプルな靴からentoanらしい靴というイメージです。
 おすすめの靴は、「ストラップサンダル」と「長い外羽根」です。
「ストラップサンダル」
 まだ靴の学校に通っていた頃、靴とサンダルの中間のような履物をつくりました。頭の中ではうまくカタチになっていたのに完成してみると何ともヘンテコなバランス。靴のデザインにはバランスがあると思っています。そのバランスを崩して新しいものを創ろう、作ろう、ツクロウとしていたのが学生時代でした。無理矢理バランスを崩しても新しいものはできない! 自分だけのデザインのバランスをカタチにすることなんだ!と、思った時に生まれたのがこの「ストラップサンダル」です。
 完成した靴を見て、この靴にしかないバランス、自分の手でしか作れないバランスがあると思えました。
 ソール(注・靴底)が厚いため重量級のサンダルに仕上がっています。デザインの上でソールを厚くしたかったというのもありますが、一番の理由は修理のことを考えたからです。わかりにくいのですが、アッパー(注・甲など底以外の部分)は手縫いの箇所を増やしデザインのアクセントになるようにしました。
 ぜひ一度足を通してみてください。手で持つと重く感じる靴も、足にフィットしているとそうでもないはずです。厚手の靴下と合わせて冬にもどうぞ。
「長い外羽根」
 「長い外羽根」は名前の通り、つま先が長いです。2㎝ほどつま先が余るような木型を使っています。アッパーはシンプルな外羽根です。アッパーは植物タンニンなめしの革を使用しているため、履くほど足になじみ、深い味わいに変化していきます。あえて自然の傷が多い革を使い、傷もデザインの一部と考え、靴の雰囲気がカッチリしすぎないようにカジュアルに仕上げています。
 そしてこの靴の一番の特徴はソールの土踏まず部分です。見ていただくとすぐにわかると思うのですがアッパー側にグイッと伸びています。これは、土踏まずをしっかりとサポートするためです。
 スニーカーなどでは中敷きの土踏まず部分が盛り上がっているものが多く見かけられると思いますが、それと同じ考え方です。革靴なので、スニーカーなどのクッション性とは違い、長い時間をかけて履いている人の足の形や歩き方に合わせて中底のカタチが変化していきます。
「スニーカー」
 履けば履くほど味が出るスニーカーを目指しました。ソールがスポンジ素材なので、革靴が苦手という方にも履いていただけると思います。
 デザインはシンプルな内羽根で、アッパーには植物タンニンなめしの革を使用しているので経年変化が楽しめます。ここが大きな特徴のひとつです。
 革特有の表情をそのまま生かしたスニーカーにしたかったので、小さな傷があったり、革に数字が印字されていたり(注・革のサイズを表示している)、1足1足違った表情になるよう仕上げています。
 スニーカーを履いていくと心配になるのが、かかとがすり減ってしまったときに修理できるかどうかだと思います。味が出てきたころにソールがすり減って履けなくなってしまっては意味がありません。このスニーカーのソールは全部取り換えることが可能な作りになっています。ソールの減りなど気にせずに、ガンガンはいていい味に育てていただけたら嬉しいです。
 革靴と同じように、クリームを塗ってブラッシングして育てるといい雰囲気になります。(第2話に続きます)
  • 「ストラップサンダル」。22.5~24.5㎝。本体部分とつま先部分の革、紐、ハト目の組み合わせが選べるのも楽しい。受注製作。¥46,200(税込)
  • 「長い外羽根」。22.5~24.5㎝。靴底(半張りとかかと部分)を革とゴムから選べます。つま先の革、紐も選べます。受注製作。¥63,000(税込)
  • 「スニーカー」。22.5~24.5㎝。つま先と羽根部分の革の組み合わせ違いがいろいろあり、1足ずつ表情が違います。限定販売。¥29,400(税込)
 
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