新 暮らしの絵日記

○月△日 夏のヘアスタイル

 1ヶ月ぶりで美容院に行ってきた。去年の夏にパーマをかけたら、洗うだけの手間いらずで楽だった。それで今年もパーマをかけた。今日は今年2回目のパーマ。といってもところどころしかかけない。それでもくるくるもしゃもしゃに見えるのは、もともと癖っ毛だからだと思う。この癖っ毛は梅雨時になるとわさーっと広がる。秋から春先まではストレートパーマをかけておさえておかっぱスタイル。今年は冬もこのままくるくるもしゃもしゃでいくかどうか、まだ決めていない。くるくるもしゃもしゃは手間いらずがいいけど、白髪は軽いのか表面に浮く。それで余計おばあさんに見える。ストレートパーマは白髪が浮かないから黒髪と行儀よく並んで下がる。ありのままの白髪まじりとなっている気がする。まあもうちょっと涼しくなったらストレートパーマをかけておかっぱにするか決めようと思う。

○月□日 こうなっちゃった

 突然だけど京都に部屋を持つことにした。(ああー、与論島から始まって、桜新町辺りのマンションでも騒いで、なんと舌の根の乾かぬうちに京都だなんて)自分でもこの決断はコマーシャルの「そうだ京都、行こう。」的軽さだと思っている。よくわかっている。今内装をしてもらっている最中(ぬけぬけしく)で、椅子や本箱をさがしている。今まで関心がなかった北欧家具からさがすことにした(こういう発展は自分でも予想外)。フリッツ・ハンセン、ハンス・ウェグナー、ボーエ・モーエンセンなどのビンテージ(聞こえはいいけど要するに中古)の椅子をさがして歩いてみて、けっこう作家不明の椅子の中にもいい感じのがあったりするし、正式には椅子の裏に作家名と会社名が入っていたりするようだけど、それがないものもあって、でもその辺りはこだわらない。生活に椅子はなしではすまされないけど、でもイタリアモダン的なのもないと私は落ち着かないから、富浦で使っているジオ・ポンティの『646』を1脚まぜ、アルフレックスの『シン』も2脚新しく購入して混ぜようと考えていた。それが北欧のを5脚も買ってしまったから、アルフレックスはやめざるを得ない今。それにしてもこういう買い物が私は一番好き。身につけるアクセサリーを買うんだったら、椅子を買う方が幸せ。部屋を新しく持つことでこういう楽しいことができる。容れ物がないと入れ物が楽しめないものねえ。

○月△日 私に出来ること

 売る服を作っていると、試作もしなければならないから、残り布がたまる。去年の東日本の震災の後、残り布で手提げバッグを作って販売した。まとまったお金になったので義援金とした。その後なーんにも努力していない。しなければと思うばかりで、動いていない。暮れにはなにかしようと頭をしぼったけど、結局また残り布で大きめ布バッグを作って買ってもらうことにした。この前作ってみたらけっこういい感じになった。後は買っていただけるかどうか。
 それにしても震災の復興も大変だけど福島の原発事故の対応、住民の仕事や生活の確保などいいニュースが伝わってこない。私には広島に投下された原爆の被爆者(当時本人は何もいわなかった)の知人がいた。歯は一本もなかった。そして若くして亡くなってしまった。だから原発反対だった。昔電力会社の原発PRの仕事を断った。うちが取っている新聞の今年8月6日の朝刊に広島原爆の記事はコラムだけだった。3日後の長崎原爆についてはなにもなかった。新聞を取るのをやめようと思った。まず今は残り布で、売るのが惜しいほどすてきなバッグを作ること。




「住む。」No.43(2012年11月 株式会社泰文館発行)
P12-13《新 暮らしの絵日記 第19回 大橋歩》より抜粋

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