特集　竹崎万梨子さんのストール展2019のお知らせ（第1話）

　イオグラフィックでは2013年から毎年開催させていただいている竹崎万梨子さんのストール展。昨年に続き、今年も東京のイオショップ＆ギャラリーと京都のイオプラス、2店舗での開催となります。
　特集では竹崎さんが撮影された写真と、制作されたストールそれぞれの原毛や羊の個性などお伺いしたお話を2話にわけてお伝えします。

ノースロナルドセーの羊一頭分の大きいストール

　ノースロナルドセーの羊は竹崎さんが羊の毛を購入されている、本出ますみさん編集の『SPINNUTS』　NO.101によると、ノースロナルドセー島の最北で海草を食べてサバイバルしてきた羊で、シェットランドの血をひいているそうです。今回、その羊一頭分を贅沢に使い大きいストールを制作されました。

英国展で紹介された、ノースロナルドセーは初めての羊だそう。「表面は長い毛のケンプが一面に、お尻の腿あたりは少し太めの毛、そして中はカシミヤのような細く柔らかい毛と、毛の太さの振り幅が広くとても魅力的でした。コンセプトは『残すことなく一頭丸ごと使ってつくる』で始めたので、太い毛もとりませんでした。カード（ほぐして梳いて繊維を揃える）もあまり混ぜずにしました。出来上がってみるとかっこいい、と思えてうれしいです」と竹崎さん。

ノースロナルドセーの羊が表紙になっている『SPINNUTS』101号。
一頭分の毛は全体的にはグレーですが濃淡があります。混ぜて均一のグレーにはせず、自然に近い色合いを大事に、部位ごとに糸にして織ることで羊の活力と優しさが感じられるストールになりました。

英国の羊オールスターのストール

　ジェイコブ、シェットランド、ウエッリッシュマウンテン、ブルーフェイス、ヘブリディアンは、竹崎さんが思う英国の羊オールスター。いつもは一種類の羊で織ることが多いけれど、今回この５頭の毛をナチュラルなまま種類ごとに紡いだ糸で、ストールをつくことに挑戦されたそうです。オールスターと呼ばれるそれぞれの羊毛の個性を楽しんでいただける、特別なストールをご覧下さい。

「５種の羊で織ることは不安もありましたが、織ってみるといい感じになりました。やわでない羊たち。巻くと張り感が心地よく、カッコいいです」と竹崎さんが説明してくださったこのストールは、羊オールスターのこっくりした豊かな色合いと風合いが感じられるとても贅沢な仕上がりです。

英国の羊オールスターの特徴
①ジェイコブ：古代メソポタミアの脂尾羊に始まるといわれ、聖書にも出てくる。17世紀に英国種として確立。毛は白と茶のぶち。
②シェットランド：スカンジナビアから来たといわれている。寒冷なシェットランド島の苔等を食べてきた英国種の中でも一番小さな羊。
③ウエッリッシュマウンテン：ウエールズ山岳地方の雨量が多い、冬は積雪がある厳しい環境の中で育つ。
④ブルーフェイス：西カンブリア地方原産。18世紀末イングリッシュレスターとチェビオットから品種改良。毛は光沢があり細かくクリンプ（縮れ）。細番手。
⑤ヘブリディアン：体は小さい羊。シェットランドと似た毛質。希少品種。

シェットランドを染めて色を楽しむ

　先にご紹介した英国の羊オールスターの一種、シェットランドを染めたシリーズが届きました。素材を活かした風合いに、竹崎さんならではの色のセンスが加わった楽しいラインアップです。

ナチュラルシェットランドのライトグレーに、シェットランドをネイビーに染めた糸を織り込んだすてきなストールです。ネイビーの太めのラインがキリッと大胆。

白が中心の黒までのグラデーションがとてもきれいなナチュラルシェットランドフリースを、大きく色分けして紡いだ毛糸は弾力がありフカフカ。

ネイビーに染めたシェットランドを緯糸にし、ナチュラルなニュージーランドポロワスを経糸にして、杉綾に織ったストール。ポロワスはメリノとリンカーンの交配種で柔らかく肌触りがいい羊です。

「シェットランドの素材がいい感じに馴染んでくれたと思います。柔らかな巻き心地です」と竹崎さん。クラシックなネイビーの杉綾が好もしいストールです。

ネイビーとワイン系の格子柄は竹崎さんがお好きな組み合わせ。ワイン色はエンジでもピンクでもない深くきれいなワインをイメージし染められました。シェットランドのふっくらした弾力を思い、紡いだ糸で平織りした大判の四角いストールは、ひと巻きでボリュームがあります。

くるみで染めた細番手のシェットランドフリースに、酸性染料の茶で染めたシェットランドを混ぜ紡いだ、こっくりとした茶色のなめらかで弾力のある糸です。無地なのであまり目立たないのですが、光の当たり具合で柄が見える茶色の濃淡の杉綾がシックです。

今回、シェットランドフリースで4色のブルーを染められました。黄色味かかったブルーは、色をつくっていくうちにイメージが広がったそう。織りはヘリンボーン。なめらかで柔らかく、巻くと膨らみのある四角いストールです。明るいくっきりとしたブルーは心が躍り、幅広いスタイルに合わせられると思います。

毎年色味を変えてつくられている、人気のグリーン。「シェットランドはよく使うフリースですが、縮絨を施すといい感じに変化し、膨らみとなめらかさ、弾力と柔らかさなどバランスがいいのです」と竹崎さん。素材の個性をみて竹崎さんのセンスで仕上げられる風合いの良さも魅力的です。

今年は少し黄色味を意識して染められたそうです。フレッシュであたたかさを感じるグリーン。

シェットランドを染めたグリーンを経糸、ブルーを緯糸に織ったちょっと玉虫色に見えるストール。グリーンとブルーの組み合わせが新鮮です。

ノース ロナルドセーの羊一頭分の大きいストール

英国の羊オールスターのストール

シェットランドを染めて色を楽しむ

ノースロナルドセーの羊一頭分の大きいストール